【生産技術の仕事内容】量産(工程)改善とは?現役技術がきつい点、向いている人など徹底解説

技術職の仕事

就職活動や転職活動で「生産技術」という仕事に興味を持ったものの、「具体的に何をするのかよくわからない」と悩んでいませんか?求人票を見ても専門用語が多く、自分が現場で働くイメージが湧きにくいと思います。

一口に生産技術と言っても、その職務は大きく「工程設計」「設備導入」「量産(工程)改善」の3つに分けられます。その中でも「量産改善」は、量産を開始したライン、製品の不具合を日々改善するのが主な仕事です。「0から1を作る」のが工程設計、設備導入とするのなら、「1を10、100にしていく」のが、量産改善の役割と言えます。

本記事では、自動車部品関連の技術職を10年以上続けている筆者が、量産改善の具体的な仕事内容や、リアルな「きつい点」、そして苦労の先にある「やりがい」と「向いている人」まで解説します。これから生産技術を目指す方や、自分に向いているか迷っている方、今のキャリアを見直したい方などの参考になると嬉しいです。


量産改善以外の生産技術の仕事は、別の記事で詳細をまとめています↓


現場のお医者さん!「量産改善」の具体的な仕事内容

量産改善の仕事は、一言で表すと「稼働し始めた生産ラインの不具合を解消し、より良い状態へと最適化していくこと」です。「工程設計」が考えた製造プロセスと、「設備導入」が設置・立ち上げを行った設備を使って、実際に量産がスタートした後に発生する、あらゆるトラブルや不具合を解決していきます。

設計や導入の段階では完璧に見えても、実際に連続して大量生産を始めると

「想定外のエラーで設備が頻繁に止まる」
「不良率が想定より高い

といった問題が必ずと言っていいほど発生します。これらの不具合を現場から聞き出し、原因を取り除き、安全に、早く、安く、高品質な製品を作れるようにするのが量産改善のミッションです。

量産改善の生産技術職は、現場の不調を聞き、必要な改善を指示する、工場にとっての「町医者」のような存在と言えます。

「現場の困りごと改善」が重要な役割

生産技術の3つの職務の中で、製造現場(オペレーター)との距離が一番近いのが量産改善の大きな特徴です。

不具合の真因を突き止めるためには、パソコン上のデータだけでなく「現場のリアルな事象や声」が欠かせません。毎日設備を動かしている現場の作業者から「昨日から少し異音がする」「製品の出来栄えがばらつく」といった細かな情報を引き出すためのコミュニケーション能力が求められます。現場の方々と信頼関係を築き、二人三脚で改善を進めていく泥臭さが求められるポジションです。

  • 重大災害(安全)
  • 客先への不具合品流出(品質)
  • 大きな設備故障(生産)

といった重大な不具合は、どうしても問題が大きくなってからの対応になりがちです。これらの不具合には、日々の生産の中に問題に繋がる火種=小さな困りごとが必ず存在します。火消し自体も量産改善の大切な役割ですが、「火種が大きくなる前に問題をみつけて消すこと」が、量産改善の腕の見せどころです。

「問題解決能力」と「広く浅い知識」が求められる

量産改善の仕事には「高い問題解決能力」が求められます。

工場で起きるトラブルの原因は1つではなく、いわゆる4Mのような「機械、材料、方法、人」など、様々な原因が絡み合っていることが多いです。これらの原因を、いかに早く特定できるかが問題解決の鍵になります。なので、量産改善の仕事は、「現場に足を運んで問題を探す」泥臭さと、「問題の真因をみつける嗅覚」が必要となります。

また、量産改善のもう一つの特徴として、特定の分野に特化した深い専門知識よりも、「広く浅い知識」が求められます

工程設計、設備導入は、「特定の製品、設備」についての深い知識が必要となります。一方、量産改善の仕事には、機械・電気・材料といった技術的な知見に加え、

  • 様々な製品の特徴(材料、形状)
  • 工場全体の設備の性質
  • 主要生産設備だけでなく、付帯設備の構造
  • 現場の作業手順、仕組み

といった、工場全体に関する幅広い知識が必要です。発生した不具合に対し、「この部分は自分の専門外だから対応できません」とは言えません。自分で対応が難しいところは、他部署や業者と会話して応援を求めるため、全ての不具合に対する「最低限の知識」を持っておく必要があるのです。

幅広い知見を元に真因を特定して解決策を迅速に実行に移す「総合的な問題解決能力」こそが、量産改善エンジニアに求められる最も重要なスキルです。


量産改善の「きつい点」:逃げられない生産直結不具合の火消し

量産改善の仕事において最もきついのは、「生産ラインを止められない」というプレッシャーの中で、突発的なトラブルを確実に解決(火消し)しなければならない点です。

量産が始まっているということは、その製品を待っているお客様(後工程や消費者)がいるということです。設備が止まって生産が遅れれば、納期遅延に直結し、会社に多大な損害を与えかねません。そのため、ひとたび重大なトラブルが発生すれば、1分1秒を争う緊張感の中で対応にあたることになります。

「とりあえず動く」では許されない、完全な火消しの難しさ

現場からは「とにかく早くラインを動かしてくれ!」と急かされますが、量産改善エンジニアは単なる「応急処置」で終わらせることはできません。

その場しのぎの対応では、数日後にまた同じトラブルが起きてしまいます。そのため、プレッシャーに耐えながらも冷静に事象を観察し、「なぜそれが起きたのか?」という真因を根気強く突き止め、二度と同じ問題が起きないよう「恒久対策」を講じて完全に火消しをしなければなりません。原因が複雑に絡み合っている場合、この原因究明と対策立案に頭を抱える日々が続くこともあります。

「突発対応」によるスケジュールの乱れと 「板挟み」

もう一つのきつい点は、自分の計画通りに仕事が進まないことです。 「今日はこの設備の改善案をじっくり考えよう」と思って出社しても、ラインから「機械が急停止した!」と連絡があれば、すべてを放り出して現場へ駆けつける必要があります。不具合によっては、夜間や休日の対応が発生することも珍しくありません。

また、前述の通り現場との距離が近いため、製造現場からの「もっと作業を楽にしてほしい」という要望と、会社からの「改善費用は極力抑えろ」「品質の基準は絶対落とすな」という要求の間で板挟みになることもしばしばあります。あちらを立てればこちらが立たずといった状況の中で、関係各所を納得させる調整に神経をすり減らすことも、この仕事のハードな側面です。


どんな人が向いている?量産改善のやりがい

泥臭い改善と現場のトラブル対応に追われる量産改善ですが、だからこそ得られる特有のやりがいがあります。中でも、特に大きな特徴2点と、量産改善に向いている人について紹介します。

現場と「一緒になって」改善を進める面白さ

量産改善の一番のやりがい。それは「自分の仕事が、目の前の人の役に立っている」という強烈な実感です。

量産改善の仕事は、工程設計や設備導入に比べると、何億円もする巨大な設備をゼロから立ち上げるような「派手で大きな仕事」は多くありません。しかし、「作業台の高さを数センチ変えた」「治具(作業用の補助器具)を少し使いやすく改良した」といった日々の小さな改善の積み重ねは、現場のオペレーターの疲労を軽減し、工場の生産性を着実に押し上げていきます。

昨日までトラブルに頭を抱えていた現場の方から、「すごく作業が楽になったよ、ありがとう!」「機械が全然止まらなくなった!」と直接感謝の言葉をもらえるのは、現場との距離が最も近い量産改善エンジニアだけの特権です。

また、現場との距離が近いことから、他の生産技術や開発などの他部署に比べ、「現場から身内として認めてもらいやすい」ことも、量産改善の特徴の1つです。日々の不具合改善から大きなトラブル対応まで、同じ目標に向かって仕事を進めることで、現場と肩を並べて進んでいく一体感を味わうことができます。

私も量産改善を数年ほど担当していましたが、この部分が特に自分のモチベーション、やりがいに繋がっていた部分だと思います。

私が量産改善(製造技術)だったときのエピソードはnoteで紹介しています良ければそちらもご覧ください。

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「自分は本当にこの仕事に向いているのか」 工場で技術職をしていると、 働き方、キャリアに悩むことはありませんか? そんな時、 「自分が仕事の何にやりがいを感じるのか」を はっきりさせておくと、 働き方の軸がブレにくくなります。 工場で働く代...

「世界初」「業界一」といった壮大なプロジェクトよりも、身近な誰かの困りごとを解決し、直接喜んでもらえることにモチベーションを感じる。量産改善はそんな人に向いている職務と言えます。

日々の改善経験で、広い知識と「ポータブルスキル」が身につく

前述したとおり、量産改善の仕事は、普段の仕事をこなしているだけで、自然と「総合的な問題解決能力」が身についてきます。これは、自社だけでなく、他社でも通用する最高の「ポータブル(汎用)スキル」です。

自社の工程、製品に関する知識を深堀りする工程設計は、高い専門性が身につく反面、身につけたスキルが他業種では通用し難くなりがちです。一方、「総合的な問題解決能力」や「広い知識」といった量産改善に必要なスキルは、様々な業界、職種に応用できるものです。

常に自分の市場価値を客観視し、他社でも通用するスキルを身につけておきたいと考える人には、工程設計より量産改善の方が合うはずです。

「とりあえず現場を見てみよう」とすぐに行動でき、技術的な分野だけでなく、人の動きや工場の仕組みなど、幅広い分野に広く浅く興味を持てる人。そんな人が、量産改善に向いていると思います。


まとめ:仕事内容と適性を深く理解し、正しいキャリア選択を!

生産技術における「量産改善」は、現場と一体となって日々の不具合を改善する、「工場の縁の下の力持ち」とも言えるポジションです。

量産改善の仕事は、生産技術の仕事の中でも地味なものが多く、突発のトラブルの火消しなど、大きなプレッシャーに悩まされることも多々あります。しかし、日々の不具合改善で現場と一緒になって仕事を進める一体感、現場の身近なメンバーから「ありがとう」と直接感謝される経験、日々現場が良くなっていく実感。現場に一番近い量産改善の仕事だからこそ得られるやりがいも、数多くあります。

就職や転職において最も大切なのは、表面的なイメージだけで判断するのではなく、こうしたリアルな「仕事内容」と「自分自身の適性」を深く理解することです。

良い面も厳しい面も知った上で、「小さなことで良いから誰かの役に立つ仕事がしたい」「いろいろな経験をして幅広い知識を身に着けたい」と少しでも思えたのなら、量産改善はあなたにとって後悔のない素晴らしいキャリアになるはずです。

この記事が、あなたの正しいキャリア選択の手助けになると嬉しいです。

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