生産技術職として日々現場を走り回って働いていると、ふと自身のキャリアパスを見上げて立ち止まってしまうことはありませんか?
私は技術職を10年以上続けています。これまでの仕事で辛いことも多々ありましたが、今は自分の仕事に満足しています。職場での人間関係も良好ですし、給料にも待遇にもさほど不満はありません。
しかし、そのような状況でも、ふと自身のキャリアに不安を持つことがあります。
「自分がいる業界の先行きはどうなるのか…」
「自分にも会社にも、これ以上の成長はあるのだろうか…」
「外の世界では自分はどう評価されるのか?」
私のように、漠然とした不安を抱えながら仕事をしている中堅社員は多いのではないでしょうか?
自身の状況を客観的に見直す上で、まだその気がなくても、「転職しない転職活動」をしておくことは非常に有効です。
転職活動をしてみることで、「今より良いところに転職しよう」と思えることもあると思います。反対に、「今の環境が自分には合っている」と、現職の良い点を再確認することにも繋がることもあります。
私も「今の自分にどのような可能性があるのか」を知るため、軽い気持ちで転職エージェントに登録し、実際にエージェントと面談もしてみました。結果、外の世界には想像以上の選択肢があることを知ることができました。
この記事では、自社のキャリアパスに閉塞感を感じている生産技術・製造系のエンジニアに向けて、私が転職エージェントから実際に提示された選択肢について整理、解説していきます。大きく「3つの選択肢(同業他社・異業種スライド・コンサルタント)」があり、それぞれの利点と注意点についても触れていきます。
この記事が、あなたのキャリアのモヤモヤを晴らすヒントになると嬉しいです。
本題に入る前に:今の「立ち位置」で選べる道は変わる
エージェントから提示された選択肢を見る前に、生産技術における”職務”と”等級”について触れておきます。転職活動では、今のあなたが「何の業務を(=職務)」「どの立場で(=等級)」行っているかによって、次に選べるカードが大きく変わってきます。
生産技術は仕事内容の幅が広く、大きく分けて以下の3つの職務に分かれます。

- 工程設計
新製品をどのように作るか、ゼロから工程や条件を決める - 設備導入
製品を作るための機械、設備を選定し、工場に据え付けて動かせる状態にする - 量産改善(製造技術)
日々生産される現場で、より早く、安く、不良品を出さないように改良を続ける
さらに、これらの業務をどの立ち位置で行っているかという「職能等級」があります。
- 担当者層(プレイヤー)
自ら手を動かし、特定領域の課題を解決する実務担当。 - マネジメント層(管理職)
チームや部署全体のリソースを管理し、他部署と折衝しながら組織として成果を出す責任者。

職務と等級(社内キャリア)については、それぞれ別の記事で詳細を解説しています↓
私は自動車部品メーカーの生産技術で、成形工程(鍛造、プレス成形など)の「工程設計」、「量産改善」を経験した後、製造課の課長補佐(プレイングマネージャー)を担当しています。これを踏まえて、エージェントから私に提示された選択肢を見ていきます。
エージェントから提示された「3つの選択肢」
実際にエージェントとの面談を通じて見えてきたのは、大きく分けて3つの道が用意されているということでした。それぞれの特徴と、リアルな難易度を順番に解説していきます。
同業他社:即戦力として最も確実だが「デジャブ」の危険性(難易度:★☆☆)

エージェントから最も多く提案されたのが、「同業他社への転職」です。私の場合、自動車や重機部品の成形加工といった、現職に近い領域のメーカーへのスライド転職となります。
この選択肢の利点
この選択肢の利点は、自分にとっても企業側にとっても、「入社後の活躍イメージが一番湧きやすい」点です。
業界特有の専門用語や、設備・工程の常識が共通しているため、プロフィールを出すだけで高く評価されます。提示される待遇や等級も、現職と同等か、稀にそれ以上のものもありました。
業界の常識や製品知識というベースがあるため、生産技術でも現職と異なる職務や、「品質保証」などの生産技術以外の部署へのスライドの可能性も高くなります。
この選択肢の問題点
この選択肢の問題点は、「数年後に今と同じ悩みを抱えるリスクが高い」ということです。
会社の看板や扱う製品が変わっても、業界の構造自体は同じです。「自社のキャリアパスに魅力がない」というモヤモヤを抱えて転職活動を始めたはずなのに、同業他社に移ったところで、結局は数年後に「この先のキャリア、どうしよう…」と同じ壁にぶつかる可能性が非常に高いです。
年収アップや労働環境の改善だけが目的であれば有効な選択肢ですが、「キャリアの閉塞感を打破したい」と考えている方にとっては、慎重に検討すべき道だと言えます。
異業種へのスライド:自社用語を捨て、スキルの「翻訳力」が試される(難易度:★★☆)

2つ目の選択肢は、現状の職務はそのままに、扱う製品の業界を変える「異業種へのスライド」です。例えば、自動車部品から、重工、鉄鋼、化学などの異業種メーカーへ移るようなケースです。
この選択肢の利点
この選択肢が実現できれば、今までに無い経験ができ、キャリアの頭打ち感を払拭できます。今の専門性を活かしつつ、全く新しい景色を見たい方には、バランスの良い道と言えるでしょう。
年収や等級は下がる可能性が高いですが、スライドする業界によっては、年収のアップもあり得ます。
各企業の平均年収は、企業規模だけでなく、その企業のいる業界の市場規模や利益率に相関があることが多いです。斜陽産業から成長産業へ身を移すことができれば、例えマネージャー層からプレイヤー層へ等級が落ちたとしても、年収はアップする可能性があります。
この選択肢の問題点
このルートは、面接官に自社の専門用語が一切通じなくなる点で、難易度はかなり上がります。
職務経歴書に自社内での専門用語を書いても、他業界の人にはピンときません。他業界で評価されるのは、今の業界でしか通用しない「専門スキル」ではなく、
- 現場改善で培った「課題解決力」
- 現場とのコミュニケーションで培った「折衝力」
- ライン立ち上げで学んだ「プロジェクト推進力」
といった、どこでも通用する「汎用(ポータブル)スキル」です。他業種への転職を検討したい場合は、自身のスキルの棚卸しの段階で、このポータブルスキルを解像度高く洗い出しておくことが不可欠です。

スキルの棚卸の方法については、別の記事で解説しています↓
また、「業界」と「職務」の両方を同時に変える(未経験業界×未経験職種)ことは、30代後半以降になると極めて困難です。私の場合だと、工場での「現場改善」と「マネジメント経験」の部分で他業種からのスカウトがありましたが、全くの未経験職種のスカウト提示はありませんでした。
異業種へ行くのであれば、これまで培った生産技術としてのスキルや経験を、そのまま持ち込んで戦うことが必須になります。
コンサルタント:年収は圧倒的だが、難易度も最高(難易度:★★★)

3つ目の選択肢は、自社の工場を飛び出し、他社の製造現場が抱える課題を解決する「製造業特化型のコンサルタント」です。
コンサルティング業界では今、製造業の泥臭いリアルを知る人材が圧倒的に不足しています。現場の不具合改善や工場でのマネジメントの経験はかなり需要が高く、大手総合エージェントやハイクラス向けのエージェントから、驚くほど熱心に提案されたポジションでもあります。
この選択肢の利点
コンサルタントの魅力は「圧倒的な年収の高さ」です。等級がマネージャー層からプレイヤー層に下がったとしても、年収は確実に上がります。
製造業技術職の20代〜30代での年収は、数百万〜多くても1千万円代が普通ですが、コンサルタント業界では2千万円を超える人もざらにいます。資金形成でFireを目指すような方であれば、かなり魅力的に映るはずです。
「個人で稼ぐ力の獲得」にも強く、将来的に独立して個人ビジネスを展開する道も開けやすくなるでしょう。
この選択肢の問題点
このルートの難易度は非常に高いと言わざるを得ません。
スカウトされて採用を受けた場合でも、実際に採用に至る割合は10%にも満たないとのことです。面接で求められる「論理的思考力の高さ」もさることながら、2社以上の製造業転職経験か、最低でも自社内で複数の職務経験がなければ可能性はありません。
ハードワークになりがちな業界でもあるため、「高い報酬と引き換えに、今のワークライフバランスや家族との時間をどこまで犠牲にできるか」という、自分自身の根源的な価値観と向き合う覚悟が必要になります。

本気で他業種やコンサルタントへの転職を目指すのであれば、JACリクルートメントのような総合型のハイクラス転職エージェントへの登録をおすすめします↓
私の場合:選択肢を確認したうえで、今の会社に残ることを決断
私の場合、エージェントと面談をして、いろいろな選択肢を検討した結果、今の会社に残ることを決めました。
私の場合、転職エージェントへ登録した理由が「今の業界と自身のスキルへの不安」が大きかったのですが、
- 同業他社
⇒ 今と同じ不安を抱えることになりそうなので、対象外。 - 他業種へのスライド
⇒ 待遇や通勤時間の面で今よりメリットのある選択肢がなかった。
他業種への憧れはあったが、現状の環境を捨ててまで転職する魅力は感じず。 - コンサルタント
⇒ 内容は魅力的だったが、転職の難易度に懸念あり。
転職後の高負荷に耐えられるかも不安だったため断念。
結局、現状維持なのは変わりませんでしたが、「実際に自分で外の世界を見てみようと1歩踏み出した」経験は、非常に良いものとなりました。「今の会社の良さを再認識できた」ことで、キャリアに対するモヤモヤが晴れた気がします。
まとめ:キャリアに不安があるのなら、転職しない転職活動は十分に価値あり

生産技術職の私が、転職エージェントから提示された選択肢は、大きく以下の3つです。
- 同業他社
即戦力で受かりやすいが、数年後にまた同じ業界構造の壁にぶつかるリスクがある。 - 異業種スライド
現場のポータブルスキルを「翻訳」できれば、環境を変えつつ待遇も維持できるバランスの取れた道。 - コンサルタント
採用の壁は高いが、圧倒的に高年収。独立の道も見える。
現状のキャリアパスに少しでも不安を感じているなら、例えまだその気が無いとしても、転職エージェントに相談してみる価値は十分にあります。外の世界を少し知るだけでも、今後のキャリアを考える上で何らかのヒントになるはずです。
ただし、転職エージェントはビジネスの構造上、内定が出やすく単価の高い求人(同業他社やコンサル)を優先して勧めてきます。なので、彼らの提案をそのまま鵜呑みにするのではなく、
「自分がキャリアにおいて何にモヤモヤしているのか」
「今後の人生で何を優先したいのか」
を客観的な目線で見ることが何より重要です。
転職はあくまで手段の一つです。「転職する」にしても、「今の会社に残る」にしても、後悔しない選択をするための判断材料を探しにいってみてください。





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