生産技術として泥臭く仕事をしていると、ふと自分のスキルについて不安になることはありませんか?
「生産技術として働き始めたけれど、身に付けることが多すぎる…」
「今の自分のスキルは他部署や他社で通用するのだろうか…」
生産技術の仕事は幅が広く、必要なスキルも無数にあります。何から学べば良いか分からない若手〜中堅社員も多いのではないでしょうか。
私自身メーカーで10年以上、技術職を続けていますが、日々、まだまだ足りないスキルばかりあることを感じています。一方、働いてきた中で「これは身につけておいてよかった」と思える知識、スキルも数多くありました。
生産技術に必要なスキルは「どの仕事でも通用する汎用スキル」と「特定の工程で活きる専門スキル」の2つに大別できます。特に、技術職にとっての土台となる「汎用スキル」の習得は、全ての仕事の中で確実に役立ちますし、その後のキャリアを大きく左右します。
この記事では、生産技術として身につけておくべき「汎用スキル」とその身につけ方について解説します。

専門スキルについては、別記事で解説しています↓
本題の前に:生産技術の仕事とスキルの「汎用」と「専門」について

生産技術の仕事は多岐に渡るため、漠然と「生産技術のスキルアップをしよう」と思っても、何から手をつけていいか迷ってしまう方が多いのではないでしょうか。
冒頭でも述べた通り、これを整理するためには、スキルを大きく「汎用スキル」と「専門スキル」の2つに分けて考えるのがおすすめです。
- 汎用(ポータブル)スキル
課題解決の手法やコミュニケーション、プロジェクト管理など、担当する製品や業務フェーズが変わっても共通して求められる「技術者としての土台」となるスキル。 - 専門スキル
材料工学の知識、機械設計、シーケンス制御など、特定の業務を遂行するために直接的に必要となる専門知識や技術。
「専門スキル」は、どんな仕事(職務)を担当するかによって、必要なものが全く異なります。生産技術の職務は、大きく以下の3つに分けられます。

- 工程設計
設計図面をもとに、「どのような工法で、どのような手順でモノを作るか」という製造のプロセスをゼロから決める職務。 - 設備導入
工程設計で決まったプロセスを実現するために、必要な機械やロボットの仕様を決め、現場に設置してモノが作れる状態まで立ち上げる職務。 - 量産改善(製造技術)
実際に日々稼働している量産ラインに対して、不良品の削減やサイクルタイムの短縮、作業者の負担軽減など、現場に密着して課題を解決していく職務。
新製品の工程やを設備レイアウトをゼロから考える「工程設計」や「設備導入」と、すでに動いているラインの効率を上げる「量産改善」では、使う知識もアプローチも変わります。さらに、扱う工程が鋳造や鍛造などの成形加工なのか、切削などの機械加工なのかによっても、求められる専門スキルは大きく変わってきます。

生産技術の仕事内容の詳しい分類については、以下の記事でも解説しています↓
一方、「汎用スキル」は、どんな仕事でも求められる全ての土台となるスキルです。身につけておけば、部署異動や転職をした場合でも、次の仕事のキャッチアップが格段に早くなります。
なので、まずはこの汎用スキルを身につけておくことが、仕事を円滑に進める一番の近道です。
生産技術に必要な汎用スキル6選
生産技術に特に必要な汎用スキルを6つ、紹介していきます。
課題解決力

モノづくりの現場で起きる不具合には、場当たり的な対応ではなく、論理的な課題解決力が求められます。
- 「現状」と「あるべき姿」のギャップを明確にする
- 現地現物で事実を正しく把握する
- 「なぜ」を繰り返して真因を特定する
- 再発防止策を打って標準化する
この一連の問題解決の「型」を息をするように回せるようになることが、技術者としての最も強力な武器になります。生産技術としても、他の職種でも、仕事をするうえで一番必要なスキルです。
コミュニケーション力

生産技術は、開発部門と製造現場の間に立つ「ハブ」のような存在です。
- 開発部門がやりたいことを正しく現場に伝える
- 現場の困りごとを聞いて問題解決に結びつける
自分や開発部門の要求を通しつつ、現場へのメリットを上手く伝えられるようなコミュニケーション能力が必要です。正論をぶつけるだけではなく、相手の立場を理解し、周囲を巻き込んでいく姿勢が求められます。
課題解決力と並んで、どんな仕事でも必須のスキルです。
プロジェクトマネジメント力

生産技術の仕事の中でも、新製品や新ラインの立ち上げといった仕事は、プロジェクト単位で進みます。生産技術の担当者は、リーダーとして大小あるそれらのプロジェクトをまとめていく力が求められます。
- 計画通りに立ち上げを完了させるためのスケジュール管理
- プロジェクトの途中でトラブルがあったときのリカバリー
最初は小さな治具の改善や単発の設備導入から始まり、そこでの失敗や反省を活かして、徐々に規模の大きなプロジェクトを回せるようにステップアップしていくことが多いです。
量産改善よりも、工程設計や設備導入の職務担当に求められるスキルです。
データ分析、統計的品質管理

生産技術の課題解決では、データを分析して、何が問題かを定量的に語れる統計的品質管理のスキルが必要です。
他部署や上司を納得させて仕事を進めるためには、
- QC7つ道具
- 工程能力指数(Cp/Cpk)
といった、統計的な品質管理(SQC)の手法を理解し、 データに基づいて論理的に意思決定を行う能力を身につける必要があります。
現場力

生産技術の仕事では、データ分析も重要ですが、長年の経験やカンのような現場で備わる力も大切だったりします。
机上の図面やシミュレーション(CAE)だけでは、モノは作れません。現場にはデータ化されていない情報が山ほどあります。
- シミュレーションと実際の機械の剛性、条件の違い
- 設備の劣化や気温など外乱の外乱による変化
トラブルが起きたらまず現場へ行き、自分の目で現物を見る「三現主義(現場・現物・現実)」を徹底できるか。この泥臭い現場力が、机上の空論を防ぎ、確かな改善へと繋がります。
生産技術の中でも、量産改善(製造技術)の職務で特に求められるスキルです。
原価に関する知識

生産技術は、「良いものを作る」だけでなく「儲かるように作る」ことを考える能力も求められます。どれだけ最新の設備を導入しても、コストが見合わなければ事業として成り立ちません。
- 加工時間や材料歩留
- 金型や工具などの消耗費
何にいくらかかっているか、製品製造にかかる全ての原価を総合的に考慮し、いかにして原価を抑えたプロセスを構築できるか。早いうちからこのコスト感覚(原価意識)を養っておくことは、非常に重要です。
スキルの身につけ方

これらの汎用スキルは、基本的に本や座学だけではなかなか身につきません。日々の業務の中で意識的に反復し、体に染み込ませていく必要があります。特に以下の2つが大切です。
小さな改善案件の積み重ね
課題解決力やプロジェクトマネジメント力を身につけるためには、小さな改善案件を数多くこなしていくことが一番の近道です。
「治具の改善」や「単発設備の導入」など、数ヶ月・少額で完結する小さな改善案件に関わる。その中で、頭で考えた仮説を現場で試し、結果から学び、また考える…。いわゆるPDCAサイクルを何度も回すことが重要になります。
小改善の繰り返しの中で、実際にデータを取って原因を調べることは、データ分析のレベルアップにも繋がります。同時に、改善によってどれくらいのコストメリットがあるかを調べることで、原価知識も向上するでしょう。
- いきなり解決策に飛びつかず、事実や現象を確認する。
- 大きなトラブルだけでなく、日々の小さな不具合に対しても、愚直にこのサイクルを回す。
こういった地道なことの繰り返しが、どんな場面でも役立つ汎用スキルの基礎を作ってくれます。
現地現物でのコミュニケーション
コミュニケーション力や現場力を鍛えるためには、製造現場に足を運び、作業者と実際に会話することが最も大切です。
データや解析だけでは分からない経験の部分を学ぶには、現場に直接教えてもらうことが一番てっとり早いでしょう。それを現地で確認することで、製造の何を見ていれば良し悪しが判断できるか、少しずつ自身の感覚として身についていきます。
また、会話の中で作業者の「困りごと」に耳を傾けることで、何が改善すべき問題なのか本質も見えててきます。この「困りごと」を改善することが、自身の課題解決力の向上にも繋がりますし、現場からの信頼を勝ち取るコミュニケーションの土台にもなります。
生産技術に必須の資格はないが、役に立つ資格はある
「生産技術として何か必要な資格はあるのか?」
と疑問に思う人もいると思いますが、結論から言うと必須の資格はありません。現場での課題解決力や立ち上げ実績こそが最大の評価だからです。
ただし、キャリアの選択肢を広げる意味で「TOEIC 600点」(海外対応や昇格要件のため)と、工場DX時代を生き抜くための「ITパスポートレベルの知識」(IT部門やSIerと共通言語で話すため)の2つは、若手のうちに学んでおいて絶対に損はありません。

QC検定や機械/電気保全技能士のような資格も、取得必須ではありませんが、知識として持っておくと役に立ちます
まとめ:汎用スキルはどこでも役立つ一生モノの財産

生産技術としてベースとなる特に重要な「汎用スキル」は、以下の6つです。
- 課題解決力
- コミュニケーション力
- プロジェクトマネジメント力
- データ分析、統計的品質管理
- 現場力
- 原価に関する知識
これらは一朝一夕で身につくものではありませんが、一度身につければ部署が変わっても通用する「一生モノの財産」になります。特に課題解決力やコミュニケーション力は、将来マネジメント層の役職に就いた際にも必ず活きてきます。
まずは目の前の小さなトラブル解決から、現地現物での事象確認と現場との会話を意識してみてください。




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